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論文の信頼性に問題、遺伝子研究で生データなし…東大 [ニュースから]

論文の信頼性に問題、遺伝子研究で生データなし…東大
 東京大学は13日、遺伝子研究で有名な同大教授らが2002年から04年にかけ、海外の権威ある科学誌で発表した4本の論文について、「実験結果の信頼性に問題がある」とする調査結果を発表した。

 論文はいずれも、研究の裏付けに不可欠な実験データや実験計画案などを記した書類がなく、同大は「実験が行われなかった可能性も否定できない」として、同教授に年度内に追試実験を提出するよう要請した。

 指摘を受けたのは、同大学院工学系研究科の多比良和誠(たいら・かずなり)教授と助手らで、遺伝子の働きを制御する「RNA干渉」と呼ばれる分野を研究。この分野は、病気の原因となる遺伝子の働きを抑えるための臨床応用が期待され、ノーベル賞が将来出る有力分野とされる。

 しかし、多比良教授らが英科学誌ネイチャーなどで発表した12本の論文について疑問を持った「日本RNA学会」が今年4月、同大学に調査を依頼したため、同研究科は同月、調査委員会(委員長=松本洋一郎教授)を発足させ、調査を続けてきた。

 調査委員会は12論文のうち、検証が比較的簡単な4本の論文について実験記録などを調査。

 その結果、論文のすべてにかかわった助手は、生データのほとんどをコンピューターに直接取り込み、一部のコンピューターはデータを保存せずに廃棄していたことが明らかになった。手書きの実験ノートも残しておらず、実験が実際行われたかどうかも確認できなかったという

 平尾公彦・同研究科長は「実験の生データがないのは極めて異例。追試の結果を受けて、厳しく対処したい」と述べた。多比良教授は「実験結果には自信があるが、それを裏付ける物的証拠を提出できず、深く反省している」と話している。
(読売新聞) - 9月14日1時26分更新


実際に、多比良教授の論文を読んだことはないし、専門分野が違うので、私は、問題になっている12の論文が、正しいのか正しくないのか判断は出来ません。

しかし、
<生データのほとんどをコンピューターに直接取り込み、手書きの実験ノートも残しておらず、実験が実際行われたかどうかも確認できなかったという。>

ココが問題だと思います。

 

直接手でノートに記していない=生データはない

研究分野では、世界でその仕事を誰がいつ成し遂げたのか。(誰が一番速かったか)が、重要な問題になります。

誰が一番に論文になったか。

が、標準になりますが、場合によっては、誰が早くにその研究を始めたか。
と言うことが問題になるコトがあり、その証拠として、実験ノートが重要となります。

また、今回の様に<論文の書かれている通りの結果が出ない>
などと言う場合にも、この実験ノートが重要になります。

 

実験ノートって??

只ノートを、好きに取ればいいわけではなく、
ルーズリーフなどバラバラになるものはダメ!
背表紙が閉じられていて、各ページに、ページナンバー・日付・名前を、ボールペンや、万年筆等の修正出来ない筆記用具で、修正液も不可。
等々が、クリアされないと、実験ノートとして認められないことがあります。
つまり後から訂正はしていないと証明出来る形で書くと言うことが重要視されるわけです。

 

しかし、今日の研究の現状は、どんな研究分野でも、PCを使用してデータを集めるのが普通だと思います。

大抵どんな測定機器にもPCが接続されていて、PC上で操作し、生データをPCに取り込みます。
機器から直接操作しても、生データの取り込みはPCであったりします。
つまり、
生データのほとんどをコンピューターに直接取り込み
と言うことになります。

写真も、昔はポラロイドで撮っていたモノも、スキャナーでPCに直接取り込むコトが多くなってきています。

大抵、データ量は莫大になることが多いと思いますので、明らかに失敗したデータ(タイミングを誤った、測定時に失敗した、反応時間を間違えた)は
一部のコンピューターはデータを保存せずに廃棄していた

することになります。


論文とは、それを読んで再現できることが重要です。

しかし、実験の内容によっては、ちょっとしたコツ、ちょっとした気の回し方が出来るか出来ないか、(このような細かい事は、まず論文には記してない)何処まで正確なトレース実験が出来ているか。
によって、再現できるヒトと、できないヒトがいる。
と言うことも、現実にある事です。

大抵、実験が論文通りに行かないと、その論文を執筆したヒトに、コンタクトを取ることになります。
そこで、何故論文に載っているデータが出たのか。
また何故、再実験で、同じ結果にならなかったのか。
両者がディスカッションをすることにより、実験室内の条件の違いや(温度・湿度などで、結果が変わることは良くある事)コツ。等々遣り取りすることになります。
そして、この時に、実験ノートが大切になります。
(生データはどうだったのか。どういう条件下での実験だったのか。)
そこで、溝(再現の有無)が埋まらないと、学会内や、その論文を載せた専門雑誌で、議論されることになります。

しかし、現実問題として、PCで解析した膨大なデータを、捨てデータを含めて手でノートに全て書くのは、大変なことだし、場合によっては意味がないコトです。

ノートには、プロトコルを書き出し、気になること、気づいたことがあれば実験途中の様子を書く。
実際のデータはPC上で保存し、プリントアウトしたモノをノートに張る。
と言うのが実際的なのではないでしょうか?
(この時、PC上の何処にデータが入っているか、また、何に焼いたか記入)

 

しかし、PCは、日付の改ざんも簡単に出来てしますから、
PC上に日付名前を入れてプロトコルから保存していても、確かに証拠にはなり得ません。
プリントアウトしたデータも、後から貼り付けることが可能ですから、証拠とはなり得ません。

それは確かにその通りなのですが。

実験方法も、昔と比べて大きく変わり、解析方法もそれに伴って変わって来ました。


世界の先端で鬩ぎ合って研究なさって居る研究室は、本当に時間との勝負で、睡眠時間を削って、お休みもほとんど取らず、ガンガン実験してたりするので、(つまり、生データがPCに大量に蓄積される)ノートがおろそかになる場合もある。と言うのも現実にあり得ることです。

この、調査委員会の方の指摘した、<捨てたデータ>が、<本当にいらないデータ>なのか、<都合の悪いデータ>なのかによって全く意味合いが変わってきますが、どういう意味なのでしょうか?

今回問題になっている論文のデータが、本当にあった現象を捉えたデータなのか、そうではなく、都合良く改ざんしたデータなのか、はたまたねつ造したデータなのかは判りません。


しかし、データの保存法。
現実的なノートのあり方。

ココは考え直すべき所だと思います。


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コメント 2

femto

大事なものこそ・・・手書きがいいんでしょうね。
カルテとかもね。
実験が「嘘」でなく、立派なものだと証明されますように と願っています。
by femto (2005-09-16 15:04) 

メイ

aikaさま・makoさま:
nice!ありがとうございます!

makoさま:
今年度中に、再実験の結果が合致することが求められているようです。
私も、結果が「嘘」でないことを祈っています。
by メイ (2005-09-18 18:28) 

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